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白い箱 [ショートショートショート]

『学校で僕をエイって押してくるケンちゃんの手じゃないみたいだ』


塾の帰り、いつもの電車より一本乗り遅れた僕は、ケンちゃんを偶然見かけた。


ケンちゃんは、「りんごの木」と印字された白い箱を両手で抱えている。


電車がガタンと揺れるたびに 足はブラリと揺れるけど


『この箱だけは絶対に揺らさないぞ』


と指先から声が聞こえてくる。


箱の中はたぶんショートケーキ。


誰と食べるのか わからないけれど


白い箱を包み込むその手は、とてもやわらかくて優しい。


ケンちゃんの視線がふと前を向く。


『ま、まずい!』


思わず顔を背ける。


ケンちゃんは再び白い箱に視線を戻した。


僕の知らないケンちゃんの世界。


 その白い箱が、少し羨ましかった。  


2017.06.21.jpg 


word&photo by.mari 


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